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とある遺書、そして始まり 

今日は曇りと雨。
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この「sonosonoといっしょ」は、
私のお気楽日記ブログなので、
現日本での医療問題について、
あまりブログ上で取り上げることはなかったのですけれど・・・

もなかさんのブログ「ママの毎日」で、
ある小児科医の労災認定
というエントリーがあるのを見て、衝撃をうけました。

なんだか大げさなようですが、本当に、驚いたのです。


医療関係者でない方が、
このニュースを大きく取り上げられるなんて・・・と。
でも、読んでみて、理由が分かりました。




この「ある小児科医」というのは、
1999年8月、21世紀を目の前にして、自ら命を断った
小児科医・中原利郎氏のことです。
当時44歳でした。


私が医師になった頃には、
「普通に、まじめにやっていれば、問題はおこらないよ。」
と教えられた医療訴訟の件数が
急激に増えてきたのも
ちょうど、この頃です。



私たちの親の代では、染色体の数が
いったい何本あるのか、
世界の先端にいる研究者でも分からなかった時代でした。

現在では染色体が何本あるかなんて、学校で教わることです。

いくつかの病気の原因解明や、治療法の研究が進んで、
医療従事者として、出来ることが増えてきました。

高度に専門技術が発達し、
それとともに、仕事量も注意事項もどんどん増えていきます。

そんな頃でした。


中原先生の勤務されていた病院では
1996年から、小児科医6人による、
24時間365日の小児科診療(夜間と祝休日の救急診療)
を行うことになったそうです。

しかし、1999年はじめには小児科医3名が辞職、
同年5月に1名増えたのみ・・・計4名の診療体制で
小児救急診療を続けることになったのです。

中原医師は、多いときには月8回の当直をこなしていました。
当直といっても、ゆっくり待機するための当直ではありません。
夜間に熱がでた子、喘息症状の子、お腹が痛い子・・・
何人も、何人も診察しながら
そして、おそらく
ご自分が主治医をしている子供たちや、
時には、他の入院中の子供たちの調子が急に悪くなれば
病棟にも立ち寄って、診察、治療しながらだったでしょう。

当直時間が終わっても、
翌日、また朝から・・・通常勤務が始まります。
外来をして、お昼を落ち着いて食べる間もなく、
午後遅くなってから、ようやく病棟へ・・・
そして、午後5時に仕事が終わるわけもなく・・・

当直の無い日であっても、
入院している子供たちが夜間調子が悪くなれば、
電話もかかってきますし、
たとえ夜中であろうとも、病院へ出かけていくのです。


あまりに過酷な勤務状態に、うつ状態となり


1999年8月、ようやく1週間の夏休みをとった
その最終日の
8月16日午前6時40分ごろ
退職すると決心を、今日こそ病院に伝えてね、
と夫人に送り出されて出かけた後・・・


病院の屋上から飛び降りて、自ら命を断たれました。




医局の机の上には、
病院の便箋3枚に記された遺書。

その最後のフレーズです。

「間もなく21世紀を迎えます。
 経済大国日本の首都で行われているあまりに貧弱な小児医療。
 不十分な人員と陳腐化した設備のもとで行われている、
 その名に値しない(その場しのぎの)救急・災害医療。
 この閉塞感の中で私には医師という職業を続けていく
 気力も体力もありません。」




夫人とお子さんが
生活基盤を整えるのに時間がかかりましたが、
2年後の2001年に
労働基準監督署に労災を申請されました。
しかし、不支給の通知を受けます。

「当直は勤務時間とカウントしない。
中原さんの場合、長時間でも過重労働でもなかった」
というのが労働基準監督所からの説明だったそうです。



中原先生のニュースは、私たちにとって、
大きな、大きなニュースでした。

好きで、誇りも持っている、素晴しい仕事だけれども、

働いて、働いて、働いて
病院に殺される・・・そこまで思ってしまうほど働いて
思いつめて死んでしまっても(自死であれ、病死であれ)
過労だとは認めてもらえないということを
知ったのです。

中原先生は、当時、
炭鉱や東京の地下鉄に連れて行かれた、
黄色いカナリアにも例えられました。



時間外労働の証拠があるかどうか、
ということが問題になりましたが、

時間外労働手当てを要求することは清い姿ではない、
無償で働くことこそ正しい医師の姿・・・
というような雰囲気もあり、
時間外手当てを要求しないのが、多くの医師の姿でした。

少したって、
大学病院でも、非常勤職員である私たちの
時間外給料が出るようになりましたが、
月20時間までしかつけないように、と仰せがあり
適当に20時間内で用紙を提出・・・

激務である証拠は病院に残せなかったのです。


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中原先生の件では
国を相手取り、労災不認定の取り消し訴訟をおこなう行政訴訟と
勤務先の病院を相手として、損害賠償請求をおこなう民事訴訟の
二つの裁判が開かれています。




3月14日、東京地裁で
何回もの当直勤務はあまりに過酷な勤務である、と判断され
労災を認める判決が出ました。


私の周りにも、激務のはざまで命を落とした医師がいます。
ある夜、救急車で来院した症例に
循環器内科の治療ではなく、
外科で緊急手術が必要だと判断しました。
連絡したのは、私です。

その手術チームに入ってくれた彼は
夜を徹して行われた緊急手術後、
早朝、ICUの患者さんの様子を見に行った後・・・

事故で命を失いました。
睡眠不足が原因でした。

患者さんは助かりましたが、
彼は命を失いました。


全国に、同じようなエピソードは
たくさんあると思います。


ようやく、これが第一歩です。
医療従事者が、元気に、にこやかに、
十分能力を発揮できる環境を作らなくては。


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中原先生の遺書全文や、
過労、そして自死の経緯
生前の人柄など
小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会
をのぞいてみてください。


そして、上記サイトでは、今、
国側控訴を思いとどまっていただけるように
葉書を送る運動を始めておられます。

控訴期限は14日間です。
(期限前に控訴される可能性もあります)
多くの方に、葉書3枚を送っていただけるよう、
サイト内にpdfファイルが置かれています。
これを印刷して、ちょきちょき切って、
表と裏に、糊ではって出すだけです。

どうぞ、サイトを見て賛同された方、
葉書を送っていただけますよう、
私からもお願いいたします。
ここにもリンクをはっておきます→要請葉書


20070316002621.jpg




民事訴訟の判決も3月29日に予定されています。







sonosono便り
3月19日記載
ここに、全日空と日航を取り違えて文を書いていました。
正しくは、全日空ロスアンゼルス支店でした。
間違いを指摘していただき、訂正するとともに、
記載したフレーズをここから削除しました。
お詫び申し上げます。



ところで、私の葉書、期限内に日本につくでしょうか・・・
皆様、「小児科」を守ろう!と思われましたら、
どうぞ、よろしくお願いいたします。





コメントもお待ちしております。

コメント

ありがとうございます
中原先生の件、詳しく教えていただきありがとうございました。
拝見しながら、何人かお医者様がおいでになる中何故か長女はいつも中原先生、次女はあのHPのアルバムに一緒に写っておいでの高瀬先生に診ていただくことが多かったこと、暮れの30日にインフルエンザで診察していただいたとき、先生ご自身もマスクをなさってお苦しそうだったこと、次女がヘルパンギーナになった時「すぐに気が付かなくてごめんね」と仰ってくださった事などが思い出され、涙が出ました。
ほんとに、ココ何年かで日本の医療、特にお医者様の環境は悪化してるように思います。
そして、それが医療の質の低下を招いているのは明らかです。
先生の遺書を無駄にしないためにも、控訴されずこの判決が実行されること、それがよりよい医療へ前進することの一助となってくれることを祈っています。
つるぎきょう
今日は何の花?とみているとどっきりする内容が・・・・
過労による自殺が労働災害と認められるまでには大変な労力が必要です。一般のサラリーマンでもすごくむずかしい。お医者様ならなおさらでしょう。私は仕事で、労災事故について見聞きすることが多いのですが、本当に残された家族は大変だと思います。そして、お医者様もコメディカルの方たちも元気にずっと働き続けられる環境になればいいなと思います。
>もなかさん
今までは、活字の中だけで優しい先生なんだ、
と思っていた中原先生なのですけれど、
もなかさんの日記を読んで、
本当に生きておられて暖かい存在だったのだ、
と実感しました。

医療問題は深刻なのですけれど、
色々な問題点、見方、解決方法があると思うのです。
ひとつじゃない。

どうしても
さまざまな仮想敵をつくって、
攻撃しあうような声もあるのですが、
でも、それは私の好む解決議論ではないと
いつも思っています。

疲れたときの、愚痴や八つ当たりなら、
よくあることだと思いますけれど。

中原先生のご家族と、過労死を支援する会は
「小児科をすくおう」というコンセプトだそうです。
「小児科医」だけではなくて、「小児科」全体です。

スパスパと医療問題を斬るような文章は書けませんが
「医師」だけではなく、「国民」だけでも「国」だけでもなく、
「医療」全体をすくう形で
皆が考えられたらよいな、と思います。

もなかさんに中原先生を教えていただいて、
このような文を書く気持ちが表に出てきました。
ありがとうございました。
>rikaさん
そうですよねぇ・・・会社などでも、労災みとめずに、自費で治療するとか、労災にしても少ししか治療費を払ってくれないなら、健康保険で払ったほうがよいとか、そんな会社員の方の話を聞いたことがあります。(整形外科などと違い、あまり、労災にかかわらないので、事実はよく知らないのですけれど)
若い方が亡くなられると、残された周りは本当に運命が一変してしまいます。

ところで、あれは、「つるぎきょう」なんですね♪
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
>↑のマツの実さんへ
当時、都内では病院小児科の閉鎖があいついでいました。
(もちろん全国的にもです。)
医療費削減政策もはじまっており、
生き残りをかけた病院では、不採算部門の切り捨てにかかります。
小児科もその一つです。
中原先生の病院でも、小児科は不採算部門とされ、
それゆえ、人員をふやす願いは、かなえられませんでした。

くたくたに疲れ、ご家族に、もうやめたら、と言われても
「小児科は僕の転職だから」
といって、小児科医であることをやめようとされなかったそうです。

では、当時勤務していた病院を辞めれば?
そして、他の病院に移ったとします。
小児科が不採算部門で、小児科医がへっているのは
どこも同様です。

辞めることはできます。
しかし、辞めた後、人員が減って、激務になっている、
その病院の同僚の勤務状態が、さらに過酷になることは
火を見るより明らかな状態です。
それでも、亡くなられた8月には、ご自分から辞めたい、と
言い出されたそうです。
当直のない、開業で働こう、と薬剤師である夫人と相談して
将来の方向を決めておられたそうです。

その前に、約1週間休暇をとられ、少し心の疲れがとれたのかもしれません。
休みの後、病院の屋上から身をなげられました。
(一般に、うつ状態から少し回復した時に、自死がおこりやすいとされています)

辞めることは出来ます。
中原先生の事件の後、辞める医師は続出しています。
中原先生は、「黄色いカナリア」だったのです。
結果、産科、小児科、麻酔科の病院における存続が、
全国レベルで危うい状態です。

3月初めに、国立循環器病センターのICU専属医師7名のうち、
5名が希望により退職することが発表されました。
日本の循環器医療の中心的存在の一つである、
心臓移植もおこなわれている病院です。
その手術後をつききりで診てくれる、医師チームの7名中、5名が辞職です。
国立循環器病センターでの手術の質は、どうしても落ちてしまうでしょう。
千葉県でも、とある病院で小児科医6人が辞めるそうです。

先日発表された、兵庫県産科婦人科学会のアンケート調査で、
兵庫県内で分娩を扱う産科医の30%が、
今後10年以内に取り扱いをやめる意向であることが、分かりました。
そのうち、3年以内をあげている医師が14%もいます。
辞める人は、増えてきています。

香川県では自治医科大学卒業者を、希望なども配慮しつつ、
小児科や産科へ重点的に配置することに決めたという話などもあります。
そういう話がすすむと、将来的にあまり医師に自由はないかもしれません・・・

でも、本当におっしゃるとおり、色々考えさせられるお話です。
コメントありがとうございました。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
>↑の方へ
大変な書き違いをしていました。
申し訳ありません。
ご指摘ありがとうございます。
上のような形で訂正いたしました。
そういえば、私の父も株持ってました・・・
少しだけですけど。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
>↑の方へ
ご訪問ありがとうございました!
そして、コメントありがとうございました。
!!
私も楽しみにしているサイトです。
また、のぞきにきていただけたら、喜びます。

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赤鼻でお願い

いや~、昨日は楽しかったですね。 \(^▽^)/しかし思ったより早く正解が出てしまったので、遅番のみなさんにご参加いただけなかったのが残念。次回は夜の部も開催できるようにいたしますのでお楽しみに!たくさん
  • [2007/03/20 12:28]
  • URL |
  • つれづれなるモナカ |
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